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ジャン「あいびき」

1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:32:40 ID:5si2.qpk

二十のとき、初めて恋人ができた。

出会いはいささかロマンチックで、若干書くのが恥ずかしい。

2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:33:28 ID:5si2.qpk

当時分隊長になっていたオレは指揮や立体起動の研究のため書庫によく足を運んだが、あるとき自分が借りる本の借方表にしばしば同じ綺麗な筆跡で日付が書かれてあることに気付いた。

それに何となくひかれたオレは、何の気に無しに、自分が最初に借りた本を返す際にメモを挟んでみた。文面は「明日十九時にここで」



3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:34:00 ID:5si2.qpk

後でオレは自分の軽率さとバカさ加減に気付いて、枕に顔をうずめたい気持ちになった。彼女がいつ借りるかもわからないのだから、メモに書かれた「明日」がいつ来るかもわからないじゃねえか、と。

普通に考えればこんな怪しい誘いには乗らないだろうと思いつつも、その後毎日職務後十九時に書庫へ通い続けた。



4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:34:35 ID:5si2.qpk

一週間ほど経ったときだったろうか。書庫に着くと明かりが灯っており、先客がいるのに気付いた。耳が赤くなるような気分で入ると、こちらに背を向けて女の子が座っていた。

振り向いた、目と目が合う。その時オレは、彼女の手に、オレが以前メモを挟んだ本があるのに気付いた。

どちらからとも分からず目をそらした。他に誰もいないひんやりとした書庫には、晩秋の虫の音が聞こえてくるだけだった。



5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:35:37 ID:5si2.qpk

「こんばんは。キルシュタイン分隊長、ですよね。びっくりしました」

はにかみながら彼女は口を切った。オレもとりあえず挨拶を返して、ちょっとばかしの自己紹介をし合った。

ショートボブの墨を流したような髪が美しい彼女は、今年入ったばかりの新兵で、まだ十五になって間もなかった。

また沈黙。恥ずかしいが、こういうことに関してはオレも新米だった。



6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:36:21 ID:5si2.qpk

やがてどちらからともわからずに、本の話になると、オレたち二人は堰を切ったように喋りだした。戦術論から、トルストイの文学に至るまで、談義に花が咲いた。他に人がいたら、さぞかしうるさく思っただろう。

じきに中宵を告げる時鐘がなり、オレは彼女を宿舎まで送り届けた。

この一風変わったあいびきは、その後も続けられた。次の日も、また次の日も――



7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:36:51 ID:5si2.qpk

人類に命を捧げた身、また分隊長として、公私混同はすまいと心に決めていたが、正直に言えば、一年後人類が首尾よく巨人との闘争に勝利を得た瞬間でさえ、その実感より、彼女が生きていたという事実の方に涙した。

そしてオレはやっと心に決めていたことを実行できると思った。そう、思っていた。

壁外への進出は急ピッチで進められた。塩の確保、農地の整備、拡大は焦眉の課題だった。当然オレも外に出る機会が多くなり、あいびきを続けることはできなかったが、手紙のやり取りは欠かさなかった。



8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:37:35 ID:5si2.qpk

そんな生活が二年ほど続いたあるとき、なかなか返事が来なかったことがあった。彼女を信頼していたので、あまり気にせず職務をしながら待っていた。

一週間後に手紙は届いた。いつものように白い封筒に美しい字で名が書いてある。だが、何故かわからないが、受け取ったとき不安な心持がした。

内容は以下のとおりである。



9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:38:11 ID:5si2.qpk

前略 さて、今回はあなたにお伝えしなければならないことがあります。

私は先日、初の海外遠征調査隊としての任務を拝命いたしました。出航は明日となっております。

今日までお伝えしなかったのは、その前にあなたと会うと、別れられなくなると思ったからです。

許してください。

草々

薄桃色の便箋には、ところどころ水滴が落ちたような痕があり、字も普段より少し曲がっているように見えた。



10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:38:46 ID:5si2.qpk

駐屯先の小さな私室で、これを読んでいたオレは、めまいを禁じ得なかった。そしてオレは、最初で最後の職務放棄を犯した。

全速力で馬を駆った。それでも明日までに東の港に着けるかは分からなかった。作られたばかりの道は、走る速度を遅らせた。

夜中に蹄が割れた。もう馬を走らせることは出来ない。制服を脱ぎ捨て、オレは走った。全霊を以って走った。向かい風が憎かった、遅い脚が憎かった。



11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:39:32 ID:5si2.qpk

暁に港が見えた。丁度船が離れるのが見えた。名前を叫ぼうとするが、どうしても声が出なかった。どうしても――

結局彼女を見ることは叶わず、曙の朝日を浴びたままオレはぶっ倒れていたらしい。

――――――――――――――――――――――――



12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/17(火) 10:40:05 ID:5si2.qpk

あれから二十年が経った。青年だったオレは、壮年のおっさんに変わった。もう記憶に残った彼女の姿のディテールも失われてしまった。

そういえば最近、海外に増えた領土の話をアルミンから聞いた。何故だか知らないが、キルシュタインと言う名前の町があるということだそうだ。

おわり

テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル

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